加佐ノ岬物語 3ー泉浜
この美しく神秘的に澄み渡っている海は、夏になると毎日のように海水浴に行っていた「泉浜」です。いまでこそ、砂浜はほんの少ししかありませんが、その頃は水辺まで砂浜が広くて、足が焦げるようでした。浪打ちぎわには伝馬船がたくさん置いてあり、町の叔父ちゃん達が釣りやさざえとりをしていました。子供たちもたくさんいました。岩場には自然にできたテーブルや椅子があり、きれいな水に浸されて、「浦島太郎の竜宮城」を想像させられました。海に潜ると太陽の光がネオンのように光っていました。今考えると自然と戯れて過ごした幸せな時間でした。
私はこんな風光明媚な土地に、1947年に生まれました。家は北前船の船頭さんだったとのことですが、「オエ」の梁にはロープでブランコが作れるほどの大きな家でした。しかし、生まれたころは外国船の船員だった父はほとんど家にはいないので、祖母と母と女三人の暮らしでした。台風になると父方の叔父が助けに来てくれました。家の後ろの納屋には疎開してきた祖母の妹家族が暮らしていました。まだまだ、暮らしが大変な時代でした。