加佐ノ岬物語8-船食い虫の板囲い
なんだと思いますか?昔は多くの土蔵や家の外壁に張られていたものです。この板は北前船の底などに使われていたもので、船食い虫が食べた後です。しかし、海の塩水の中で長く浸かっていたため固く、腐食しないために橋立町ではよく使われていたものです。現在もまだ3か所ほど残されています。物を大切にし、再生して使っていこうとする心構えの現れです。貴重なものです。
世の中、「だんしゃり」などと言って物を整理し捨ててしまう行為がもてはやされていますが、いらないと思ったものも年月がたてば貴重なものとなるようです。橋立町が重要伝統的建造物群として指定を受けたことも、最初からそうしようと思って歴史を刻んできたわけではありません。日本海の荒波に立ち向かって命を懸けてきた北前船の船主や乗り組み員たちが、家族が安心して暮らしていくための家を守り、偶然建て替えられなく残されてきた結果であります。
私も「もったいない」という思いや、「いつか着れるわ」「こんな素敵なお茶碗、そばに置くだけでいいわ」などと捨てられないでおいてあるものが一杯です。人生も中程をすっかり超えてしまった年齢ですが、まだまだやりたいことも一杯あります。また、新規事業に取り組んでみたものの、エネルギーがどこまで持つのかも心配です。何はともあれ元気に元気に、ゆっくりゆっくり生きたいものです! 宮本啓子