加佐ノ岬物語4-北前船の里資料館
ここは、旧酒谷家であった北前船の里資料館です。幼少の頃、一人っ子であった私はこの家の近くにあった父親の実家へ遊びに行って過ごすことが多かったのです。
その頃、船主の大きな屋敷は家財道具などを売りさばくための「競り市」が開催されていました。家じゅうに蔵から出された骨とう品などが並べられ、売られていったのです。ある日、私はこっそりと覗き込んでると、旧西出孫左衛門の家の競り市で、たくさんのお雛様が競りにかけられていました。そのお雛さんがなんだか悲しそうに見えました。すぐ、祖母たちに「なんで、お雛さんが売られているんや、かわいそうや!」と聞いてみました。祖母は「昔は大金持ちやったんや、けど戦争もあったし売らなければならなくなったんや!」と言われました。
それから、私は北前船の歴史に興味を持ち、小学校5年生の時には、同級生と「北前船探偵団」を結成、中学校では「地域の歴史」を学び、高校では郷土研究家でもあった牧野隆信先生にその歴を教えてもらうために「郷土研究部」に所属してきました。そして、結婚後、夫とともに、この資料館つくりのための運動を行いました。この館は私にとっては、人生の中の一つの道しるべでもありした。